【技術資料】オペアンプに電流ブースタを設ける際の

過電流保護回路の盲点と対策案

初版 (2013/5/30)

【オペアンプの電流ブースタ】
 オペアンプの出力電流を強化する為に【図1】や【図2】の過電流保護回路付きの電流ブースタが一般的な回路とされています。
 T1、T2が過電流保護の為のトランジスタです。
図1 図2
 保護動作のポイントは
   過電流で抵抗R1(R2)の両端電圧、即ちトランジスタT1(T2)のベース電位が上昇する。
     ↓
   トランジスタT1(T2)がオンになる。
     ↓
   パワートランジスタT3(T4)のベース電流がバイパスされてオフになる。
というものです。

 一般的な教科書での記述はここ迄で、保護回路が動作した後の動作が記述されたものは調査した範囲では見当たりませんでした。
 そこで実機とシュミレータで確認するとオペアンプによる負帰還回路特有の見落とし易い問題点が有りました。以下はその概要です。

【問題点】
図3 @+電圧出力時に過電流保護回路が動作すると 「非反転入力端子電圧=負帰還された反転入力端子電圧」 の関係が崩れ、即ちオペアンプの差動入力電圧が大きくなる。(図3)

A @に伴い、オペアンプの出力は+側飽和電圧迄振れ、オペアンプ→T2→負荷の経路で比較的大きな逆電流Irevが流れる。

B同様に−電圧出力時に過電流保護回路が動作すると負荷→T1→オペアンプの経路で比較的大きな逆電流Irevが流れる。

 @〜Bにより
 ・オペアンプ入力がその差動入力電圧定格を越える可能性がある。
 ・オペアンプの過大なドライブ電流が定格以上にジャンクション温度を上げる。
 ・T1、T2のコレクタ−エミッタ間電圧が定格を越える。
 ・T1、T2の過大な電流が定格以上にジャンクション温度を上げる。
等の不具合を生じさせる可能性が有る。

 なお、上記ルートの電流が流れる原因は、例えばオペアンプ出力が+Vampで飽和した場合には
   T2のコレクタ電位は(+Vamp−Vf)でベース電位より大きくなる。
     ↓
   T2がコレクタとエミッタを入れ替えたPNPトランジスタ動作をし、電流Irevがコレクタからエミッタに流れ(https://www.rohm.co.jp/web/japan/tr_faq)、負荷に流れ込む。
というものです。

 この現象は負荷が短絡した場合や、通常負荷抵抗が小さいダーリントン接続の場合に顕著になります。
 また、過電流の要因が継続して保護回路が継続的に動作する場合には、各デバイスにダメージを与える可能性が有ります。
  (https://www.semicon.toshiba.co.jp/contact/faq/product/transistor/bipolar/answer_bipolar04.html の様にコレクタ−ベース間の逆バイアスを禁止している場合も有ります。)
 なお、入力保護回路や出力短絡保護回路が内蔵されているオペアンプも有りますが、継続的にその状態に置く事は推奨されていません。

【対策案】
 本来は過電流要因が発生したらオペアンプと電流ブースタの回路動作を停止させるべきですが、その為の回路が複雑になるので、ここでは次善の策として現状の回路に簡単な対策を施す事を考えます。
 以下の対策案は周辺回路の条件と使用するデバイスの仕様で要否や定数が決定され、且つ、出力電圧範囲の減少、周波数特性悪化等、対策によるデメリットも生ずるので、適宜取捨選択し、定数を決定する必要が有ります。
図4 図5
@オペアンプ入力端子間にダイオードを入れる。
Aオペアンプ出力端子に限流抵抗を入れる。
BT3、T4のベースとバイアス回路にダイオードを入れる。
  (図は説明の都合上T3側のみ示しています。)
C Bの代わりにT3、T4のベースにダイオードDXと抵抗RXを入れる。
   抵抗RXはダイオードDXオフ時のトランジスタ回路の発振防止用です。
  (図は説明の都合上T4側のみ示しています。)
Dダーリントン接続時(図5)は後段のトランジスタT5、T6のベースにT1、T2のコレクタを接続する。
  前段のトランジスタT3、T4で逆電流が防止されます。
  但し、後段のトランジスタを複数並列にする場合はそのトランジスタの数だけ保護トランジスタが必要になります。

 まだ他に、よりスマートな対策方法があるかもしれませんのでご検討してみて下さい。

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