実用向けチップ部品のはんだ付け

リフロー用パッド対応可能「点眼はんだ法」


●はじめに
オペアンプ基板バナー  リフローはんだ付けによる量産向けの製品用基板では、筆者の様な初心者にはチップ抵抗の手はんだ付けはかなり難しいものです。
 図1は一般的な1608チップ抵抗のリフロー用パッドです。
1608パッド寸法図
    単位[mm]

     図1 1608チップ抵抗リフロー用パッド

 リフロー用パッドでの手はんだ付けが難しい主な原因は、図1の様に一般的にはパッド外-外寸法が2.0mm(程度)の為、 長手方向1.6mmのチップ抵抗に対して加熱スペース(電極とパッド外端の距離。こて先を当てる事ができるスペース) が約 0.2mmと小さい事にあります。
 実際にトライしてみると、0.2mmx0.8mmの側面から見て直角の隅になる小さな加熱スペースに、 まんべんなくはんだを流れ込ませて正しくはんだ付けするのは結構難しい事が判ります。

 インターネット上の動画等で、1608サイズ以下のチップ部品を上手にはんだ付けしているものは部品実装密度が低く、 パッド(ランド)サイズが充分大きい練習用基板の様な比較的好条件での場合が殆どです。

 開発現場では、量産向け試作回路の手作業組み立て、後納部品の後付け、検証作業に伴う部品変更等のリフロー用パッドに対する実用的な手はんだ作業が必要になりますが、 初心者でも容易に行なえる方法は、現時点では公開された情報からは探し出せませんでした。

 そこで量産向け製品用基板のはんだ付けを試行錯誤し、ある程度満足できる結果を得たので、「点眼はんだ法」として結果を覚え書きにしました。

 同じ平面寸法のチップ抵抗とチップコンデンサでは、通常チップ抵抗の方が部品高さが小さいのでフィレット高さも小さく、その分はんだ付けは難しいので、 以下では1608サイズのチップ抵抗のはんだ付けについて記しますが、チップコンデンサや他のサイズのチップ部品についても「点眼はんだ法」はそのまま適用できる筈です。

 「点眼はんだ法」に慣れれば、一般的な部品実装密度の基板であれば、チップ部品のはんだ付け部周辺をマスキングテープでカバーする必要も無くなります。


●一般的なはんだ付け方法
 以下はインターネット上で見られる一般的なはんだ付け方法です。
付加機能付きユニバーサル基板_バナー
@はさみはんだ法
 チップ抵抗の電極とこて先の間にはんだを挟んで溶解し、同時にパッドを加熱しながらこて先をチップ抵抗の電極に押し当てる様に移動させてはんだ付けします。
はさみはんだ法の図
          図2 はさみはんだ法

 初心者でも比較的容易にできますが大きな加熱スペースが必要で、メーカ推奨寸法の加熱スペース 0.2mm程度の製品用基板では、 Φ0.3mmのはんだを用いたとしてもはさみはんだ法は使えない事になります。

 即ち、はさみはんだ法は、加熱スペースが小さい場合のチップ部品に関しては余り実用的ではなさそうです。

A溜め流しはんだ法
 一般的な呼称が不明なので仮称です。
 予めこて先にはんだを溜めた状態(表面張力でドーム状に盛り上がった状態)にし、こて先でパッドを加熱しながらチップ抵抗の電極に押し当てる様に移動させてはんだを流し込みます。
溜め流しはんだ法の図
     図3 溜め流しはんだ法

 こて先に溜めたはんだの多くが流れ出す一方、溜めるはんだが少な過ぎるとはんだが移行しないのではんだ量のコントロールが困難で、 加熱スペースが小さい場合のチップ部品に関しては、溜め流しはんだ法も余り実用的ではなさそうです。

 何れの方法でもパッドが充分大きい場合には余分なはんだはパッド全面に広がるので余り問題になりませんが、パッドが小さく加熱スペースが小さい製品用回路基板では、 はんだ量過多で懸垂曲線状のフィレットにならず、ドーム状に盛り上がり易くなります。(補足説明参照)


●点眼はんだ法(解決案)
SMD用ユニバーサル基板バナー  解決案として新たに提案する実用的なはんだ付け法は、その手順のイメージから「点眼はんだ法」と呼ぶもので、 はさみはんだ法に似ていますが、はんだ量の調整方法が大きく異なります。

 以下の手順はあくまでも初心者でも上手くはんだ付けできる様にする為の、万人向けのベーシックなものです。
 慣れて来たらフラックスの塗布時期を変える等、各人がやり易い手順にアレンジして下さい。

【点眼はんだ法の基本手順】
点眼はんだ法の図
          図4 点眼はんだ法

 以下の動画も合わせてご覧下さい。


■点眼はんだ法による1608チップ抵抗のはんだ付け
はんだ:Φ0.3mm鉛フリーはんだ
基板:CHIP/DIP兼用 ユニバーサル基板PX1320
電極当たり加熱スペース:0.2mm


■点眼はんだ法による1608チップコンデンサのはんだ付け
はんだ:Φ0.3mm鉛フリーはんだ
基板:CHIP/DIP兼用 ユニバーサル基板PX1320
電極当たり加熱スペース:0.2mm

■点眼はんだ法によりオペアンプ基板に1608チップ抵抗はんだ付け
はんだ:Φ0.3mm鉛フリーはんだ
基板:シングルオペアンプ(x2)基板 PX1330
電極当たり加熱スペース:0.2mm



@1.5CF型こて先とΦ0.3mmはんだを準備
 こて先は太さΦ1.5mmのC型、周辺にはんだを散らさない様にする為に先端の斜めカット面のみにはんだめっきしたものとします。
 狭いスペースでのはんだ付けなのでΦ0.3mmの糸はんだを使用します。

Aパッドに予備はんだ
 はんだ付けするパッドにフラックスを塗布し、薄く予備はんだをします。
 はんだは出来るだけ平滑にします。
 部品取り替えの場合は、部品を撤去した後に残ったはんだをこて先で平らにすればそのまま利用できます。

B部品位置決め
 加熱スペースが小さいので、両電極の加熱スペースが均等になる様に正確に部品を位置決めする必要が有ります。
 初心者が位置決めの為にはんだ付けによる部品の仮止めを行なうのは難しいので、表面実装はんだ付け用ツール「SMDクランプ」 の利用を強く推奨します。

C最初の電極のはんだ付け
 パッドと電極にフラックスを塗布します。
 予めこて先のはんだをはんだクリーナで拭き取るか、残っていてもはんだ量のコントロールに影響しない程度の量にして置きます。

 こて先を電極から僅か(0.1〜0.2mm)に離してパッドの加熱スペースに当てて加熱し、 熱したら電極とこて先の間に糸はんだを挟み込み、ほんの一滴「点眼する」イメージで供給し、はんだが解けたらこて先を電極側に移動させ1〜2秒間軽く押し付けてパッドと共に加熱し、 はんだが電極と加熱スペースを濡らしたらこて先を離します。
 この時加熱スペースが小さく電極とこて先の間にはんだが入らなければ一旦こて先をパッドから離して間隙を作りますが、 加熱したパッドが冷めない様に出来るだけ手速く行ないます。

 また、こて先を電極に押し付ける際に、クランパ上部を軽く指で押すと(位置決めした部品への加圧を参照)部品が押えられてずれを防止できます。

 こて先を上まぶた、電極を下まぶたとし、間にはんだを滴下したら閉じて馴染ませるという、目薬を点眼するイメージが「点眼はんだ法」の由縁です。

D反対側電極はんだ付け
 反対側電極を作業側にクランプし直し、同じ要領ではんだ付けします。

SMDクランプバナー
Eフラックス除去
 フラックスリムーバと綿棒やガーゼを用いてフラックスを除去し、はんだ付け完了です。


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 本稿の主題である点眼はんだ法の手順は以上です。
 以下は補足説明として関連事項をメモしたものなので、ご興味をお持ち頂けたらご覧下さい。

【補足説明】

●1608サイズチップ抵抗のリフロー用メーカ推奨パッド寸法
 下図は KOA社 の推奨パッドサイズからの抜粋です。
KOA社推奨パッド寸法
 B寸法は他のメーカでもほぼ同様で最小2.0mmです。
 朱書きの追記の様に、その時の各電極の加熱スペースは0.2mmであり、量産用基板での手はんだ付けがし易い条件とは言い難いものです。

 0.6mmのC寸法はメーカ毎に多少異なっており、本稿では0.8mmとしています。

●パッドが小さいとはんだ付けが難しくなるのは何故か?
 パッドが小さく加熱スペースが小さいとはんだ付けが難しいのは、適正なはんだ量の許容範囲が狭い為、と考えられる事を図5 で説明します。
はんだ過多説明図
      図5 はんだ量過多の状態比較 (クリックで拡大)

 図5(a)の加熱スペースが大きい場合は、懸垂曲線状のフィレットを構成するはんだ量を越えるはんだは、 加熱スペース全体に薄く広がるのでフィレットの形状に及ぼす影響が小さく、その分はんだ量の調整は容易になります。

 一方、図5(b)の加熱スペースが小さい場合は、はんだ過多分の殆どがチップ抵抗の厚み方向に積まれるので、 フィレットは表面張力でドーム形に膨らみ、懸垂曲線状とは程遠いものになります。
 これははんだ量の適正範囲が狭く、はんだ量の調整が難しくなる事を意味します。

 さらに、パッドの加熱スペースが小さい為、パッドが充分に加熱されずにはんだが載らない不具合が発生し易くなります。
 しかも外観上は電極側だけに載ったはんだがパッドにも載っている様に見えるので、目視では発見がし難い不具合です。

 以下は加熱スペースの大小異なるはんだ付けの実験の様子です。


【実験】大加熱スペースの場合のフィレット形状確認
溜め流しはんだ法による1608サイズチップ抵抗のはんだ付け
基板:0.65mmSSOP用ユニバーサル基板PX1610

【実験】小加熱スペースの場合のフィレット形状確認
溜め流しはんだ法による1608サイズチップ抵抗のはんだ付け
基板:0.65mmSSOP用ユニバーサル基板PX1610


●点眼はんだ法補足説明
 以下は点眼はんだ法のポイントに関する補足説明です。

  1. こて先
    こて先を1.5CF型(Φ1.5mm)としたのは試行錯誤の結果です。
    1CF型(Φ1.0mm)では熱容量が不足してはんだが溶け難く、点眼はんだ法には適しませんでした。
    2CF型(Φ2.0mm)は加熱スペースに対してこて先が大きく、初心者が細かい作業をするには不向きでした。

  2. こて先の予備はんだ
    量産現場における 鉛フリーはんだの問題と対策(河合 一男 氏 ビジコムポスト)の様に、 専門的には予備はんだとして予めこて先にはんだを載せて置くべきとされている様です。

    点眼はんだ法では、供給したはんだにこて先に残ったはんだが引き込まれるとはんだ過多になり易くなります。
    従って、点眼はんだ法では敢えて予めこて先のはんだはクリーナで拭き取っておくか、残すとしても引き込まれない程度の量にします。
    但し、作業終了時には保護の為に、こて先にはんだを載せて置く必要が有ります。

  3. はんだ
    こて先とパッドの狭いスペースに少量のはんだを供給する為に細いはんだ必が要なので、Φ0.3mmの糸はんだを推奨します。

    Φ0.6mmのはんだは熱容量が大きいので溶け難く、さらに少量の必要分だけを溶かすのは難しいので、 結果としてはんだ量のコントロールが難しく、初心者には扱い難いです。

    Φ0.3mmのはんだが無い場合にはΦ0.6mmのはんだの先端約0.5mmをラジオペンチで潰して使用する事もできますが、1.5CF型のこて先でははんだが溶け難い問題は残ります。

  4. SMDクランプの使用
    加熱スペースが片側0.2mmしかないリフロー用パッドでは、チップ抵抗の長手方向に0.1mm位置ズレしたら加熱スペースは各々0.3mm、0.1mmになり、0.1mm側の電極のはんだ付けは大変困難になります。
    従って、リフロー用パッドでのチップ抵抗のはんだ付けには正確な位置決めが必須であり、初心者が部品への加熱が過熱にならない様にしながらはんだ付けによる仮止めを行なうのはかなり困難です。
    その際に、テープでの固定は現実的ではなく、接着剤での固定も手間と時間が掛かり過ぎます。

    表面実装はんだ付け用ツール SMDクランプを使用すれば部品の過熱を気にする必要がなく、簡単、確実に位置決めを行なえます。
    さらに、点眼はんだ法ではコテの操作とはんだ送りが同時に必要なので、手を使わずに部品をクランプできるSMDクランプは大変重要です。

  5. パッドの予備はんだと加熱
    チップ部品の電極ははんだやスズ等でメッキされており、熱容量も小さいので、こて先が触れた瞬間にはんだが溶けて馴染みます。
    一方、パッド(加熱スペース)は比較的熱容量が大きく、はんだが溶ける迄加熱するにはある程度時間が掛かります。

    この事から、電極とパッドに同時にこて先を付けて加熱する方法では、外観は正常にはんだ付けされた様でも、 パッドの加熱が不足してはんだが溶着せず、はんだ付け不良の可能性が生じます。

    特に本稿対象のリフロー用パッドでは余り熱容量の大きくない1.5CF型のこて先を使用するので、 初心者はパッド側のはんだ付け不良を起こす可能性が高くなります。

    これを回避する為に以下の二つの対策を行なうものとしました。
    @部品を搭載する前にパッドに予備はんだをしておく
    A電極にこて先を当てる前にパッド(加熱スペース)を加熱する

    その後にこて先と電極ではんだを挟み込む様にして溶融させ、広がったらこて先の先端を電極とパッドの接触点(直角の角の部分)に接触させ1〜2秒間加熱します。
    これにより、電極はもちろん、パッドにも確実にはんだが溶着します。

    点眼はんだ法に慣れない内は、最初の電極のはんだ付け後に部品をピンセットで軽く揺らせてチェックする事を薦めます。
    正しくはんだ付けされていれば部品は動きませんが、不具合時は部品が動き、さらに強く揺らすと部品が外れます。
    さらに、はんだ付けが完了したらテスターでの導通チェックもスキル向上に有効です。

    なお、部品メーカ毎に仕様書でこて先温度が規定されているのでそれに従う必要が有ります。
    また、殆どのメーカの仕様書には、電極を含む部品本体に直接こて先を当てない様に注記しているので、 本来は「こて先の先端を電極とパッドの接触点に接触させ1〜2秒間加熱」するのは良くないかもしれません。

    しかし、はんだ付け不良を発生させるのは拙く、信頼の置ける日本メーカ品で試してみて特に問題は無かったので、敢えて短時間接触させるものとしました。
    但し、長期間の信頼性が確保されるかどうかは不明です。

    その様な長期信頼性を必要とする出荷製品に対して手はんだ付けを行なえるのは超ベテランであり、初心者が手を出せる範疇ではないと割り切りました。

    なお、パッドの予備半田は部品位置決めの障害にならない様に、できるだけ薄く平らにする必要があります。
    こて先にはんだを多く付け過ぎると盛り上がってしまいます。

    実際にパッドの予備はんだに必要なはんだ量は微量ですが、どの程度かを数値で認識して置くのは大事なので、 図1の1608チップ抵抗リフロー用パッドに厚さ20μmの予備はんだをする場合について以下に概算して見ます。
    なお、ホーザン社によると糸はんだのフラックスを除く正味のはんだは円柱体積の約81%との事なので、概算にはこの値を使用しています。
    KOA社推奨パッド寸法
    上の計算に因ると、予備はんだのΦ0.3mm糸はんだ所要量は長さ0.14mmと微量である事が判ります。

  6. 適正はんだ量
    そもそも、適正な所要はんだ量は幾らかを意識せずに、作業の中での見た目の状況ではんだを供給するのは合理的とは言い難いですが、その様なケースは案外多そうです。

    そこで、1608チップ抵抗の高さ0.45mm、加熱スペース0.2mm、パッド幅0.8mmとした場合に、 フィレットの懸垂曲線状部が直線になった状態を適正なフィレットの最大値とし、はんだの体積と対応するΦ0.3mmの糸はんだの長さを図6で概算しました。
    実際には表面張力で底面と上面は平行になり得ませんが、あくまで概算なので三角柱で近似させます。

     なお、本概算にも「糸はんだのフラックスを除く正味のはんだは円柱体積の約81%」(ホーザン社)を使用しています。

    はんだ量概算
        図6 適正はんだ量の概算 (クリックで拡大)

    図6から必要なΦ0.3mmの糸はんだの長さは最大でも0.63mmであり、かなり少ない事が判ります。
    実際にはこて先に付着するはんだが有るので必要量は0.7〜1.0mm程度と考えられます。

    以下はΦ0.3、約0.7mm長の糸はんだにより1608チップ抵抗をはんだ付けした様子です。


    ■Φ0.3、約0.7mm長の糸はんだによる1608チップ抵抗のはんだ付け
    フィレットは大凡適正形状最大値で、はんだ量概算値はほぼ正しいと考えられます。
    基板:0.65mmSSOP用ユニバーサル基板PX1610


    動画はΦ0.3、約0.7mm長の糸はんだによるはんだ付けであり、大凡概算値と一致しています。

    はんだクリームに因るリフローでは懸曲線状のフィレット形成はそう困難ではないかもしれませんが、 手はんだ付けでは点眼はんだ法でもかなり困難であり、現実的な対応として、正しくはんだ付けが成されている限りは、 ドーム状のフィレットも許容されるものとします。

  7. はんだフラックス
    多くのはんだフラックスメーカは単に「フラックス」と呼ぶ様です。
    本稿あるいは関連動画でも単に「フラックス」と呼ぶ場合があります。
    フラックスを塗布しなくても糸はんだ中のフラックスで足りる場合も有りますが、はんだの濡れ性が良くなってパッド上に広がり易くなるので、 初心者にはフラックスは必須と考えるのが無難です。


●点眼はんだ法のポイント
 最後に点眼はんだ法のポイントをまとめます。

  1. 微小部品対応のこて先とはんだを使用
  2. 過多にならないはんだ量コントロール
  3. パッドへの予備はんだと先行加熱、電極とこて先間へのはんだ供給
  4. 表面実装はんだ付け用ツール「SMDクランプ」の使用

 以上 (改訂 2018/08/12、初版 2018/07/26)

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